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自然呼吸する岩石 稚内層珪藻頁岩
珪藻土が地圧と地熱を受けてできた「ページ状岩石」
稚内層珪藻頁岩は、北海道の稚内地方の宗谷・天北地域で産出し、海洋性単細胞の珪藻プランクトンの死骸が推積して、2500万年前に出来た珪藻土が地上に隆起する時に、地圧と地熱による地質的変性を受けて岩石化したページ状岩石(写真1)です。
珪藻土より3〜6倍の自然吸放出機能
珪藻土に比べて、稚内層珪藻頁岩は、珪藻土の多孔質細孔(写真2)よりも珪藻が変質した数ミクロンの微細な細孔の針状が集合した球状の(マリモ状=写真3)の微粒で構成されて、その微粒の細孔の容量が珪藻土の5倍の容量を占める為、珪藻土より3〜6倍、ゼオライトの8倍、炭の4〜6倍の自然吸放湿機能をもちます。
室内の湿度を60%前後に自律性調湿機能と消臭機能
稚内層珪藻頁岩の自然吸放湿機能は、室内の温度が60%以上に高くなると、急速に吸湿を行い、湿度が下がると放湿して、室内の湿度を60%の状態に調整する自然呼吸作用による自律性調湿機能を持ち、抜群のアンモニア消臭機能を持ち、また、良好な遠赤外線を放出します。
健康な室内環境を創出し、アレルギーとアトピーの発生を抑える
室内の温度が60%前後に自立調湿される事は、人や物質にとって最適な室内温度の環境で、結露・カビの発生とダニの繁殖を抑え、アレルギー性疾患と乾燥性アトピー皮膚疾患の発生源となる細菌と微生物の発生を抑え、また、冬期には60%前後の湿度状態でインフルエンザの感染を抑えることができる、健康な室内環境を創出します。
稚内層珪藻頁岩の物性
?.稚内珪藻頁岩(地質学名:稚内層珪藻質頁岩)の特質
稚内層珪藻頁岩は、主に北海道天川地方で発掘され、海洋性単細胞生物である珪藻プランクトンの遺骸が500万〜2500万年前(新生第三期中新世)に推積し化石化して出来た珪藻土が、地上に隆起する時に発生した地圧と加圧熱により地質的変成を受けて出来たページ状岩石です。
電子顕微鏡で見ると一般的な珪藻土(上 写真2)にはリング状の珪藻土遺骸が見られますが、稚内層珪藻頁岩(上 写真3)にはリング状の部分は認められますが、珪藻が変質したマリモ状の微粒子が確認され、地質的変成を受けた事が判ります。稚内層珪藻頁岩はこのように珪藻土が地圧と加圧力による熱的変成を受けた為、珪藻土と比較して微細な細孔(表面にある穴)を大量に持ち、酸や熱に強い特徴を持ちます。
?.稚内層珪藻頁岩と産地別珪藻土との物性相違
化学組成および鉱物組成の比較
(1) 化学組成の分析値
化学組成の分析値を下記の表に示します。
稚内層珪藻頁岩及び珪藻土を構成しておいる物質は、SiO2、Al2O3が主成分でありますが、産地によって若干の差があります。
(2) X線解析測定
鉱物種を固定する測定値のX線回折測定結果を下記の図に示します。秋田・石川・大分珪藻土はほぼ結晶性はなく非晶質シリカが主成分で、若干の石英が含まれます。岡山珪藻土は長石やクリストバライト(注1)が含まれます。 稚内層珪藻頁岩は、主として非晶質シリカであるオパールーCT・石英・長石等で構成されています。
(注1) クリストバライトは国際がん研究機関(IARC)により発がん性物質に認定されています。 稚内層珪藻頁岩及び珪藻土の主成分は非晶質(非結晶性)シリカである為、発がん性物質に分類されていません。
稚内層珪藻頁岩と珪藻土との機能性
?.稚内層珪藻頁岩と珪藻土との吸放湿機能の比較
(1)水蒸気吸着等温線による比較
稚内層珪藻頁岩と珪藻土との相対湿度の吸湿時における水蒸気吸着等温線では、図-1に示すように、各産地の珪藻土は温度の上昇に対して吸湿率の立ち上がりが曖昧で低い吸湿率を示すのに対し、稚内層珪藻頁岩は60%RH程度で急激に立ち上がり、高湿度で高い吸湿率を持つという調湿材として必要な特性を持っています。
(2)細孔容積と比表面積
稚内層珪藻頁岩が水蒸気吸着等温線に示す特性の要因は、稚内層珪藻頁岩が持つ細孔の細孔半径と細孔容積(図-2、図-3参照)と、細孔の比表面積(図-4参照)とが基になっています。
稚内層珪藻頁岩の細孔容積は珪藻土の約5倍(図-3参照)有り、また、稚内層珪藻頁岩の比表面積は珪藻土の約4〜6倍の100?/g(図-4参照)あります。
すなわち、水蒸気吸着等温線(図-1参照)の立ち上がりの度合いは、細孔半径の大きさとその細孔容量と比表面積の大きさによって決まります。
近年、独立行政法人産業技術総合研究所中部センター(旧通産省工業技術院名古屋工業技術研究所)における研究によって、調湿機能として自律性吸放湿作用を行うのに必要な細孔の細孔半径は24〜26Å(Å=オングストローム:オングストロームとは、長さの単位で、100億分の1メートル(10-10m)、すなわち0.1nm(ナノメートル)を表す単位のことである。オングストロームの単位は、原子や分子の直径、X線の波長などを扱う際に便利であるため、ナノテクノロジーの分野などではしばしば単位として用いられる。)(図-2参照)である事が明らかになりました。
稚内層珪藻頁岩は、調湿機能に必要な細孔を大量に持ち(図-3参照)、その細孔半径20〜70Åの細孔容積が70%(図-2参照)を占めている事と比表面積が非常に大きい為、相対湿度が50〜60%RHの付近で水蒸気吸着等温線(図-1参照)が大きく立ち上がる事を示しています。
(3)稚内層珪藻頁岩と産地別珪藻土との吸放湿変化測定比較
稚内層珪藻頁岩と産地別珪藻土とを相対湿度90%RHで24時間吸湿率を測定し(吸湿過程)、相対湿度を50%RHで24時間で放湿させる(放湿過程)方法で調湿機能を評価しました。この方法では吸湿過程で高い吸湿率を示し、放湿過程で低い吸湿率を示すものが良い吸放湿性を持つと言えます。測定結果は(図-1参照)稚内層珪藻頁岩は高湿度で速やかに吸湿して、高い吸湿率を持ち、低湿度では速やかに放湿する事が判ります。
また、各産地別の珪藻土は相対湿度90%RHの高湿度での24時間吸湿過程では、短期間での少量の吸湿率で飽和状態となる事を示し、相対湿度50%RHで24時間放湿過程では少量の放湿率で放湿限界状態となる事が判ります。
調湿機能を評価する1つの指標として、ここではこの時の吸湿率の最大値と最小値を吸湿率の最大値と最小値を吸放湿機能と定義しています。その吸放湿機能を棒グラフ(図-2参照)に示します。稚内層珪藻頁岩の吸放湿機能は珪藻土と比較して3倍以上の吸放湿機能を持ち、湿度の変化に応じて速やかに吸放湿し、卓越した調湿機能を持っています。
(4)基本物性値
稚内層珪藻頁岩(1.0mmアンダー粉砕物)の真比重と嵩比重の一例を右記の表に示します。真比重については各産地別の珪藻土の値、2.2〜2.3g/c?と同様の値であり、稚内層珪藻頁岩は鉱物種を除いて各産地別の珪藻土と同様の物性を示します。
嵩比重は粒度により異なるため参考値です。
?.稚内層珪藻頁岩と産地別珪藻土との焼成温度に対する測定比較
(1)焼成温度と吸放湿作用
稚内層珪藻頁岩及び珪藻土を各種窯業原料として焼成を行い使用する場合は、焼成温度に留意が必要です。焼成温度と吸放湿機能の関係を図に示します。各産地の珪藻土は焼成温度1000℃で吸放湿性は失われます。これに対して稚内層珪藻頁岩は焼成温度850℃から吸放湿性が急激に低下しますが、1100℃まで吸放湿性があります。しかしながら吸放湿性の機能性としては低い事を意味しています。稚内層珪藻頁岩及び各産地の珪藻土を焼成して製品にする場合には、吸放湿機能が低下する温度以下で焼成して使用する事が望ましい事です。
※各産地の珪藻土は1000℃以上、稚内層珪藻頁岩は1200℃以上の高温で焼成すると、クリストバライト化しますので
、
高温焼成は避けて下さい。
※クリストバライトは国際がん研究機関(IARC)により発がん性物質に認定されています。
(2)稚内層珪藻頁岩と各産地別珪藻土との焼成温度による吸放湿変化
?.稚内層珪藻頁岩と珪藻土等に対する混合材及び複合材または加工材
(1)有機化合物質・天然物質・加工物質の使用について
[1]有機化合物質の使用
稚内層珪藻頁岩及び珪藻土を各種窯業原料として焼成を行い使用する場合は、焼成温度に留意が必要です。焼成温度と吸放湿機能の関係を図に示します。各産地の珪藻土は焼成温度1000℃で吸放湿性は失われます。これに対して稚内層珪藻頁岩は焼成温度850℃から吸放湿性が急激に低下しますが、1100℃まで吸放湿性があります。しかしながら吸放湿性の機能性としては低い事を意味しています。
[2]鉱物性の天然物質と加工物質の使用
稚内層珪藻頁岩及び珪藻土の多孔性物質を使用した製品の製造の為に、稚内層珪藻頁岩及び珪藻土等に、鉱物性天然物質または加工物質を、単体か他の物質の複合材を混合して製品にする場合には、複合材に含有する物質の物性を充分に熟知して検証の上で使用する事が必要であり大切な事です。
稚内層珪藻頁岩及び珪藻土を利用して製造された製品に使用される鉱物性天然物質と加工物質、その他の物質等の複合材が混合によって、稚内層珪藻頁岩及び珪藻土の表面に被覆材となって付着して、稚内層珪藻頁岩及び珪藻土の持つ物質的特性を阻害したり、弊害が発生したりしますので、充分に科学的な思考と検証が必要です。
(2)「珪藻土の融剤によって被覆した焼成珪藻土」(通称=白色珪藻土)
[1]「珪藻土の融剤によって被覆した焼成珪藻土」について
「珪藻土の融剤によって被覆した焼成珪藻土」の製法は、珪藻土の焼成時に、融剤である「炭酸ナトリウム」を加えて1100〜1200℃程度で高温焼成します。
珪藻土に「炭酸ナトリウム」を加えて高温度でロータリーキルン(回転式焼成炉)で焼成すると、「炭酸ナトリウム」が高温によって融解して、珪藻土粒の表面のシリカと反応してガラス化し、ガラスの被膜が珪藻土粒を被覆します。その被覆したガラスによって白色に見える「珪藻土の融剤によって被覆した焼成珪藻土」即ち、通称=白色珪藻土と呼ばれる珪藻土の加工物質になります。
※白色珪藻土は加工物質・・・珪藻土を高温度焼成する時に、加えた融剤の「炭酸ナトリウム」が融解して、珪藻土粒の表面のシリカと反応してガラス化した皮膜が、珪藻土粒に被覆した加工物質です。
※白色珪藻土の「核」となっている珪藻土粒の殻は「クリストバライト」化・・・白色珪藻土の「核」となっているガラスで被覆された焼成珪藻土の「珪藻土粒殻」は、1100〜1200℃程度の高温度で焼成されている為に、国際ガン研究機関(IARC)で発がん性物質に認定されているクリストバライト化しています。
[2]「白色珪藻土」の吸放湿性について
珪藻土粒の表面に、高温焼成時にガラスの被膜が被覆した白色珪藻土には、微量の吸水性と少量の吸湿性があります。ただし、湿度の変化に合わせた自立的な大量の吸放湿作用による自律性吸放湿機能による調湿機能は発現できません。
[3]「白色珪藻土」・珪藻土・稚内珪藻頁岩の吸湿測定について
「白色珪藻土」・珪藻土・稚内珪藻頁岩の試料を、比重による容積によってメスシリンダー(ガラス製筒型計量器)に少量の水と、試料を交互に入れながら、試料を交互に入れながら、試料が水を吸水する量(吸水量)吸湿率とした計測値を公表している資料の中で、吸湿率は白色珪藻土の方が優れていると公表している資料があります。
しかし、吸水と吸湿は物理的に違う為、一般的に理科学資料等での記載表現では、試験用試料の吸水する量(吸水量)を吸湿率として表現する事はありません。また、吸水性物質には、一般的に「水に漬ける、水に入れる、水を掛ける、雨がかかった、結露が発生した」等の水を吸水して、その水の吸水した量(吸水量)によって、濡れた状態とか、湿気った状態とかいう現象があります。すなわち、この現象は水を吸収(吸水)した、吸水量によっての現象であって、空気中の水蒸気(湿気)を吸収(吸湿)して湿気った状態となった、現象とは違うものであります。
※「白色珪藻土」の吸水は、珪藻土粒の表面がガラスの被膜で被覆されていますので、焼成珪藻土粒の間に空隙があり、その空隙に水の液体が透過する過程で微量(一般的には0.5%の吸水率)の吸水があります。
※「白色珪藻土」は、珪藻土粒の表面がガラスの皮膜で被覆されていますので、食用飲料関係の濾過材として、液体(水)の透過作用が優れている。
※「白色珪藻土」の吸湿は、空気中の水蒸気(湿気=気体)を吸収した場合に、通常での吸湿率は3%前後で平衡に達し、飽和状態になります。
※白色珪藻土の吸水する量を吸湿率として計測値を公表する計測方法ですが、一般的には、理科で学んだ様に、液体(水)と気体(水蒸気=湿気)とでは分子の大きさが違い、物質の分子形状は大きい順に、個体→液体→気体となっている事が知られています。したがって、物質に液体である水が吸水された吸水量または吸水率を吸湿率とは表現しません。空気中の水蒸気(湿気=気体)が物質に吸収された吸湿の量を吸湿量(g/?)で表現します。
(3)「白色珪藻土」の主な用途は、食用飲料関係の濾過材
白色珪藻土は、食用飲料関係の濾過材として使用する事を主とした目的の製品で、特にビールの製造に於いて、ビールを精製する時にボール酵母を除去する為に大量に使用されています。
尚、食用油関係の濾過材には活性白土が使用されています。
食用飲料関係の濾過材としては、不純な有機物を含有しない無機質の物質で吸水性が低く、適度な粒状で良好な空隙、透過性に優れた粒度の物質の濾過材として、珪藻土粒の表面にガラスの被膜が被覆した焼成珪藻土=白色珪藻土の製品が使用されています。